俺は意を決して、ドアをノックした。


「はっ…はい…!」


少し涙声で言った涼風さんの言葉を聞いて、中に入った。


「あっ…!優君か~!どうしたの?」


涼風さんは笑顔で言ってくれたが、目元は少し腫れていた。



俺は心配の言葉が出そうなのをグッとこらえて、笑顔を作った。



「花摘んできました!涼風さんに似合うと思って!」


ベッドの横の棚の上に置いた。


「綺麗~!ありがとね優君!」



涼風さんが笑顔で言ったのを見て、ベッドの横にイスを置いて座った。



「傷痛まないですか?」


「全然!絶好調よ!片腕無くてもあんた達には負けないから安心しなさい。」



さ…さすが…。


涼風さんは笑って言っているが、本当に負けそうな気がする。


「確かに!涼風さんには勝てそうにないや~…。」


俺がそう言うと、涼風さんの視線が一瞬動いたのを見た。


鏡かな?



立ち上がって、着ていたパーカーのチャックを下ろして脱ぎ、鏡に被せた。



「そこまで気にしなくていいよ?」


少し悲しげな顔をして言った。


「気にしてませんよ!」


俺はまたイスに座った。



「嘘ついてるでしょ。わかるのよ~?」


涼風さんは俺の顔を覗き込んで言った。


「気にして…ないって言ったら…嘘になります…。」


俺はうつむいて言った。


すると、涼風さんは頭を撫でてくれた。


「だったら気にしないで?私はあんた達を守っただけだから!自分を含めてあんた達があの状況で生きてるって考えたら‥腕1本くらい安いわ。だから優君が深く考えることないわ。」



やっぱり涼風さんは優しいや…。


俺は結局上手く接することができなかった……。



「でもありがとう…。私のこと気にかけてくれて嬉しいわ!さすが優君ね!いい男だわ!」



涼風さんは笑って言った。



やっぱり涼風さんには適わないや…。



俺は心の中でそう思った。