―優と涼風―
俺は花を摘んで花瓶に移し替えて、涼風さんの病室に向かった。
「うっ…うぅ…!えぐっ…えぐっ…!うぅ…。」
病室の前から泣き声が聞こえてきた。
俺はドアにかけた手を離す。
今は行かない方がいいよね…。
―『そうね。あんなに綺麗な人だし…どれだけ強くても女性だからね。』―
ガーディアンが言った。
―『繊細な物だな。悪魔と契約してる時点で覚悟しているかと思うがな。』―
イスーラが言う。
覚悟してても…辛いでしょ。
俺は病院を出て、外に座った。
涼風さん……。
俺…勘違いしてた…。
勝手に涼風さんは強い人だって思い込んでた。
何も変わらずに接してくれた涼風さんに甘えてたんだ。
ピトッ。
「わっ!」
頬に熱い物が当たって、驚いて後ろを振り返った。
後ろには缶コーヒーとココアの缶を持った楓さんが居た。
「楓さんか~…。ビックリした…。」
「楓でえぇわ!よそよそしい奴やな~!」
楓はココアの缶を俺に渡して、隣に座る。
缶を受け取って、冷えた手を温めた。
「薫はんといい…優といい…少し重く考えすぎやないか?」
缶コーヒーを開けて、1口飲んで言った。
「俺も涼風はんが泣いてるの聞いた。でも‥顔を合わせれば普通に接してくれてる。何も気にしてないように振る舞ってくれてるんや。
今はそれだけでえぇやないか。
涼風はんが本当に辛い時は言ってくれると思うで?
今お前にしてやれることは‥涼風はんがしてることと一緒ちゃうか?
お前が深刻な顔すればするほど‥涼風はんはお前の為に空元気になるんや。
本当に悩ませたくないなら‥こんな所で座らんで気張ってこんかい!
辛いのはお前だけじゃないんやから。」
楓は俺の肩を叩いて笑った。
できるかな俺に…。
でも…涼風さんがそれを望むなら…そうしないと…。
「まぁ、悩みなさい若者よ。俺は少し散歩してくるわ!」
そう言って楓は歩き始めた。