「……ん……う…ん……。」


ゆっくり目を開けると、真っ白な天井が見えた。


「起きた…。薫が起きたで~!!」


うるっせぇ…。


この声は……楓か……。


俺は起き上がって、傷を確かめた。


丁寧に治療されている。



「楓…ここは…?」


楓に今居る場所を聞いた。


「洞窟があった村の診療所や。俺や優は幸い傷も少なかったからすぐ回復したけど…薫はんと涼風はんは傷が深いから回復が遅かったんや。

涼風はんは昨日起きたけど…薫はんはあれから3日も寝たままやったから死んだ思たわ~!」


楓は俺の肩を叩いた。


「涼風の様態は?あいつも傷が深かったって今言ったよな?」



俺がそう言うと、楓はうつむいた。


俺はベッドから降りようとしたが、楓は止めた。



「今は行かん方がえぇ。優がずっと側に居てるから心配あらへんわ。」



優が?


涼風はそんなに悪いのか…?



「それより…今は生きてることを喜ばんかい!」


楓は俺の背中を叩く。


「……どうせなら……死んだ方がマシだった。」


俺は外を見ながら言った。


「何でや?」



「…何も…できなかった…。救ってやることもできなかったし‥結果的には全員を巻き込んだ……。

俺は…今まで一体何をしてきたんだ…。
何も変わってなかった…強くもなってなかった…。

こんな俺なら…死んだ方がマシだ…。」


楓は俺の胸ぐらを掴んだ。


「死んだ方がマシかい…あんたは何様や?初めから強い人間なんぞ居るかい!

生きていればチャンスはある。何度転がったって…何度倒れたって…生きている限り歩けるんや。

ここで止まれば…一生ここのまんまやぞ?」


生きていれば……。


俺は拳を握った。



「焦らんでえぇんよ。薫はんは薫はんのペースで…またチャンスを掴めばいいんや。」



楓はそう言って笑った。