それから涼風さんとの特訓は続いた。


月日がしばらく経ってからは涼風さんの護り屋の仕事も手伝うようになっていた。



そして…








―特訓開始から1年後―



俺は大木の方に来ていた。


1年前の大木は無傷だったが、現在は蹴り痕がついていた。


「ふぅ~…。」


タバコの煙を吐き、地面に落としてタバコの火を踏んで消した。



「せ~…の!」


思いっきり蹴ると、結構な量の葉が大木から落ちてきた。


悪魔の腕にして鎌を生やした。


そして、それを地面に落ちるまでに全部斬った。



―『合格だな。』―


アビルが言った。


「今更かよ。こんなのとっくの昔にできてたろ。」



腕を元に戻して伸びをしていた。



ん?


ビュウッ!



風が吹いてナイフが飛んできた。


俺はそれを指で挟んで取った。



「涼風姉‥用があるなら普通に来いよ。」


そう言うと、涼風姉が茂みから出てきた。


「言ったら特訓じゃないでしょ?しかし…1年も経つと背も高くなったし、髪もすっかり伸びちゃって!」


あんまり伸びた気はしないが…涼風姉が見ると170にはなってるらしい。


髪も1年前は前髪が少し目にかかってるくらいだったのが口元くらいに伸びた。


襟足も肩にかかるくらい伸びていた。



「涼風姉…俺…1人で行動しようと思うんだ。」


俺がそう言うと、涼風姉は笑った。


「そろそろ言うと思ってたわ。どこに行くつもり?」



「扇杜…。」


「扇杜?あんな危険地帯にわざわざ行くの?」


涼風姉は驚いて言う。



――――――――――――

―「薫!絶対一緒に合格して扇杜の高校行こうね!」―

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「憧れだからな。」


「ふ~ん。まぁ、今の薫なら大丈夫よ!しっかり頑張りなさい。」


涼風姉は俺を抱きしめた。


「今までありがとう。行ってくる。」



俺はその日、扇杜に向かい始めた。


桜の憧れた地へと…。