始末屋



俺は桜を見上げた。


遠いな‥。


こんなに近くに居るのに…。



昨日まで…一緒に居たのに…。


また涙が溢れてきた。



―『おい。泣くのは後でできるだろ?とりあえずここから出るぞ。』―



そうだ…!


戒さんに言わなきゃ…。



俺は走って洞窟を抜け出した。


すると、村の人達が出口に居た。



村の人達が道を開け、そこから戒さんと米婆がこっちに歩いてきた。



「戒さん…!皆が…桜が…!俺の中にも…悪魔が…!何とかして…」


俺は戒さんの肩を持って言った。


だが、戒さんは俺の手を払った。


そして、村の人達は俺を取り押さえる。



「な…戒さん…?!」


「薫…皆を殺したな?」


戒さんは真面目な顔をして言った。


「違う…俺じゃない…。悪魔が殺したんだ!!」


「あなた…薫の言うことを少しは聞きましょう?」


米婆は戒さんに言うが、戒さんは米婆を突き飛ばした。


「お前は黙ってろ!!」


米婆…。


戒さん…何で…!!



また俺は意識が途切れそうになる。



「ダメ…!お前は…出たら…!」


俺の抵抗も虚しく、デスアビルが俺の体を乗っ取った。


『離せ!!』


デスアビルは村の人を投げ飛ばした。


『うちのご主人様がお怒りだよ?そこの婆(ばばあ)‥よっぽど大切らしい。』


「薫‥じゃないな‥。皆捕らえよ!」


デスアビルはさっきの鎌を出した。


村の人達は動けずにいる。


鎌を戒さんに突き付けた。


『あんた‥そんな態度じゃいろんな物落とすぜ?せいぜい気をつけることだ。俺には関係ないがな…。』



デスアビルはそう言って、村から出ていった。



育った村が……桜と居た村が……。


どんどん遠ざかっていく。



もう後戻りできないんだ…。