始末屋



『ちっ…!』



突然体が宙に浮いた。


恐る恐る目を開けると、もう1体の悪魔が俺の服を掴んで飛んでいた。



「わっ…!」


『いちいち驚くな。人間の悪い癖だ。』



悪魔はそう言うと、髪が長く、切れ長な目をして、髑髏をモチーフにした鎧を装備した男に変わった。



『これでいいか?人間の姿は慣れないから嫌なんだよ。』



な…何…この状況…。


『そんなにビクビクするな。お前はあの女を救いたい…俺はあの女の中に入ってる奴を殺したい。お互い利害は一致しているな?』


俺は頷いた。


『だったら…俺様と契約しろ。喜べ…この俺様と契約できる奴なんてこの世には居ないぞ?仕方ないが契約してやるよ。』



契約…。


そうしたら桜は救えるのかな…?



「本当に…救えるの…?」


『あぁ…救えるさ。』



桜と…また幸せな日々を過ごすんだ…。



「…契約…する…。」


そう言うと悪魔は笑った。


『俺様がいいと言うまで手に触れてろ。それで契約完了だ。あの女を救いたいなら手を離すなよ?』



俺は恐る恐る悪魔の手に触れた。



「うわぁぁ~~~‥‥!!!」


膨大な映像が頭の中に流れ込む。


目の前で首が跳ねられたり、逃げ惑う人達を黒い炎で焼き尽くされたり、そんな状況下でも俺にすがりつく。



―『な‥なん‥で‥?』―


―『か‥おる‥』―


―『なぜ…こ…んなこ…と…』―



やめてよ…。


俺じゃないんだ…。



瞳に映った顔はまさしく俺の顔だった。


違う…違う…違う…違う…違う!!!



―『お前だよ。お前の心の奥底が望む願望だ。』―


さっきの悪魔の声が聞こえる。


こんなこと……望む訳ない…!


―『望んでんだよ!』―


悪魔が目の前に現れる。