牧瀬組の事務所はビルの中にあり、俺達は向かいのビルで状況を見ていた。



「うわ~…さすがにガードが堅いね~…」


優が双眼鏡を覗きながら言った。



「そりゃそうだろ。表にも裏にも名が轟く牧瀬組だぞ?ガードが甘い方が不自然だよ。」


タバコに火をつけ、煙を吐いた。


「どうすんの薫。あれじゃ入れないよ?」


「立ち塞がる奴を殺せばいいだけだ。行くぞ。」


タバコを吸って目を閉じ、ゆっくり息を吐いて集中する。






「待って!」



突然後ろから女の声がして、振り向いてみるとそこには依頼人の理恵が居た。



「理恵ちゃん!こんな所に居たらダメだよ!」


「優の言う通りだ。ここは女の来る場所じゃねぇ。消えろ。仕事の邪魔なんだよ。」



俺はそう言ってタバコを地面に落として踏みつけた。



「あなた達がちゃんと仕事するか見てなきゃいけないの!」


俺達の言葉に動じず、食い下がる理恵。


「やめとけ。下手したら巻き込まれて死ぬぞ。」


俺がそう言うと、理恵はうつむく。


「それでも…構わない!」


顔を上げ、真っ直ぐな瞳で俺達に言った。



ったく。


女って奴は一度言い出したら聞かねぇ奴が多いから嫌なんだ。


「優…お守りは任せた。早く行くぞ。」


俺は理恵に近付き、手を取った。


「え?」


「少し我慢しろ。優…捕まれ。」


優は俺の背中に捕まり、俺は依頼人を抱えてビルから飛び降りた。


「キャァ~~~!!!」



うるせぇ女。


背中から黒い羽を生やし、牧瀬組の事務所の入り口に着地した。



「何だお前!!」


「どこの組のものだ!」


すぐにヤクザ共が俺達を取り囲む。


俺は羽をしまい、首の骨を鳴らす。



「何だこいつ!」


「お前ら聞いてんのか!」



手の骨を鳴らし、ヤクザに向かって構える。



「うるせぇよ。始末屋だ。お前ら全員始末しにきたんだよ。」



腕を全体を黒く染めて、さらにその腕から黒い鎌を生やした。