―裏扇杜のとあるBAR―




「なぁ、聞いたかよ。あの変な噂。」



中年の男がビールジョッキを片手に、連れの男に聞く。


私はカウンター席で、グラスを揺らしながら聞き耳を立てた。



「あぁ、聞いたよ。この辺りでのさばってたヤクザが一晩で全滅したんだって?」



「そうそれ!しかもたった2人で!何か不思議な力を使うガキ共とか聞いたけど。」


不思議な力?


何だろう。


グラスのお酒を一口飲んで、更に聞き耳を立てる。



「不思議な力ねぇ~。1人は『angel』の頭だった『暴走天使』だったんだろ?あとの1人は?」




緊迫した空気が漂い、男は口を開く。



「あと1人は……全てが謎。ただ、死神みたいなでかい鎌を持ってその場に立ってたから『扇杜の死神(せんとのジョーカー)』って呼ばれ始めたらしい。」



扇杜の死神……。


予想以上ね。



「まぁ、そんなガキ居るかどうかもわかんないしな!『暴走天使』もいつか死んだって噂流れてたし…信憑性がねぇな。」



男がそう言うと、2人は大きな耳障りな声で笑い始めた。



私はグラスのお酒を飲み干して立ち上がった。



「チェックして」



そう言うと、マスターは伝票を私に渡した。



3万5千円。


2杯しか飲んでないのに。


さすが裏扇杜。


ぼったくるわね。



財布から4万円出してマスターに渡した。


「お釣りはいらないわ。」



マスターに笑みを浮かべて外に出た。


情報は手に入った。



腕は確かなようね。



カバンから紙を出して、紙を見てみる。