熊田良平は、薄暗い街の中を一人で徘徊していた。

 噴水の有る中央広場は、沢山の街灯により明るく照らされてはいるが、赤黒い血痕が広がり何とも不気味で気持ちが悪く近付く気になれないため、敢えて薄暗い裏路地を選び歩いていたのだ。

 辺りには、当然の事ながら誰もいず、自分の影だけが薄く石畳の路面に延びていた。

 そして暫くすると、遠くの方にギラリと光り輝く4つの丸い小さな光がこちらへ近付いて来るのが見えた。

 その光は、地を蹴る様な音と共に段々と勢いを増してこちらへ近付いて来る。

 カシュッカシュッカシュッカシュッ…………

 その瞬間、良平の頭には野犬の事が過ぎった。

 (もしかして……野犬……)