もう野犬との距離は30m程しか離れていない。

 「尚美走って」

 美紀の声と共に走り出す。

 しかしその距離は段々と縮まって行きもう10m程と為っていた。

 「尚美先に行って」

 美紀はそう言って立ち止まり剣を野犬に向かって闇雲に振り回す。

 野犬は走りながら前傾姿勢を取り地を大きく蹴って美紀に飛び掛かる。

 〈ガゥーーーッ〉

 美紀の振った剣は虚しく空を切り美紀は野犬に飛び掛かかられた勢いで後ろへ激しく転倒する。

 「キャーーーーッ」

 悲鳴を上げながらドサリと倒れ込んだ美紀の喉元に鋭い牙が迫る。

 〈ガゥーーーッ〉
 「キャーーッ」
 ……グシャッ…………

 美紀がもう駄目かと思った時野犬が血を流しながら横へ転がった。