その後、正春はマンションへ戻り、一人ベッドの中で震えていた。

 頭から布団を被り、震える手でウイスキーの入ったグラスを持ち……。

 「これで私も、あいつと同じ殺人犯だ……」
 「やっ…やってしまった…」

 そう言いながら、ウイスキーを一気に飲み干し再びボトルへ手を延ばす。

 カタカタカタカタ……………

 ボトルを持つ手が震え、グラスに当たり、小刻みに接触音を響かせる。

 そして、グラスに入らず飛び散ったウイスキーが、布団に染み渡り、広がって行く。

 ピルルルルッ……ピルルルルッ……

 そんな中、リビングの電話が鳴った……。

 「いったいこんな時間に…」
 「まさか…警察に……」

 正春は、そうボソリと言いながら、電話に出た。

 「はい…真田ですが……」
 〈私よ…解る…ウフフッ〉

 それは、あの女からだった。

 〈貴方がやらなくても……〉
 〈私が殺って上げたのに…〉
 〈ウフフッ…心配いらないわ〉
 〈私しか知らないから……〉

 見られていた…、正春に恐怖が走る。

 「見ていたのか……」
 〈見ていたわ〉
 〈2人でずっとね…ウフフッ〉
 「ふっ…2人で…さっき…」
 「も…もしかして……」
 〈片付けて上げたわ…ウフフッ〉
 〈ニュースを楽しみにしててね、正春…ウフフッ〉

 ツーッツーッツーッツーッ…………

 そして、電話は切れた……。