「小百合っ!ベランダから逃げて!!!」

「いやだ!拓海くんを置いてけないよっ!!」



あいつがドアを破いた。
なんとかタンスを押さえ付けるが、どんどん押されてく。
凄まじい力で、骨が折れるのも構わずにタンスに突撃してくる。
ついに…


ガターン!


「うわっ」


押し負けた。



「小百合…小百合ぃ…」

「やだ…こないで…こないでぇ!!!」



物を投げつけても…
それが頭に当たり、血が流れても…
父親は止まらない。
これまでだ…
そう思った。
俺は小百合を抱きしめて…
必死に父親を睨む。
小百合は俺の腕の中で震えながら、ゴメン…ゴメン拓海くん…と泣いている。
あいつが俺たちの目の前に来た。
包丁が高々と上げられる。



「小百合…ゴメン…守りきれなくて……」

「!!…違う…そんなの。謝るのは私…ごめんね………拓海くん………ありがとう…」



包丁が振り下ろされた。
目を閉じ、腕に力をいれた。



ドスッ



嫌な音がした……