ジジッ


蝉の鳴き声が聞こえる。


(うるさい…
だから夏は嫌いなんだ。

蝉の雑音はむさ苦しいし…
無駄に暑いし…
雨はジトジトと…
いいことなんて一つもない)


「…あつい…」


俺、橋本 拓海は学校の校門辺りを歩きながら呟いた。

今年はとくに暑い。

熱中症患者も去年の倍ということで、先生には気をつけろと言われる。

気をつけてほしいなら最初から学校を休ませてほしい。

頭痛持ちの俺は、朝から頭痛薬を呑んでいた。



「…保健室に行こう…」



夏になって俺は保健室に通い続けている。
もともと体が弱いせいもあるが、何より授業が嫌だった。



ガララッ



「失礼します」

「あら、橋本くん?どうしたの?また頭痛?」

「はい」
「じゃあベッドの準備するわね?」

「すみません」



保健室の若い女の先生が布団のカバーを外す。
その横にはカーテンの閉まったベッド。



(またか?)



この頃保健室でよくあう奴がいる。
どうやら貧血らしいが…



(ここんとこ毎日だな…)



本当に毎日のように保健室にくる。
まぁそういう俺も人のことを言えたもんじゃない。



「橋本くん?そこのベッドね?私、職員会議や保健だよりの製作をしなくちゃいけなくてここ離れるけど…大丈夫かな?」


大丈夫じゃなければどうするつもりなんだか…


「大丈夫ですよ。俺も頭痛がひいたらクラスに戻ります」

「そう?ならお願いね?」



そう言い残して先生は出ていった。