兎心の宝箱【短編集】


 私は、カバンを持つと部屋を出ようとする。

 コウは、動かない。

「私もコウの事を親友だと思ってたけど今日でおしまいね。冬子を泣かせたら、私は一生アンタを許さないから」

 そう言い残して部屋をでた。

 コウは、追い掛けてこない。

 涙で視界がボヤける。

 靴をはいて門をでた所で声がした。

「あっ! 夏……美?」

 声を掛けてきた冬子は、私の顔を見て戸惑ったように立ち止まる。

 涙で濡れた顔を見られてしまった。

「ごめん」

 どうにか喉からそれだけを絞り出すと、私は走ってその場から逃げ出した。