兎心の宝箱【短編集】

「ですが、犯人は大きなミスを犯しました。皆さんこの写真を見て下さい。部屋に入った直後に、アリスさんが撮ってくれた写真です」

 一枚の写真が皆に回される。それは、ドア側から撮った一枚の写真だった。

 椅子と大きな机、そしてフラッシュに反射した雨と椅子の下の血溜まりが映し出されている。

「皆さん、何か違和感を感じませんか?」

 写真を見てミリアが目を逸らす。やはりまだ主を殺された傷は癒えておらず、つらそうにしている。

 他のみんなは、何も思い当たる節が無いのか、しきりに首をひねっている。

「では種明かしを、警部、首にナイフが刺さったままの状態で、床にこれだけの血溜まりができるにはどれくらいの時間が必要ですか?」

「首は、一番血が良くでるが、絶命した後は血の勢いが無くなる上に、ナイフで栓がされている。計った事はないが、一時間程度は、必要だろうな」

 またしても食堂にどよめきが走る。

「警部、有難う御座います。そうです皆さん! 私達は、確かにグレーバー卿の部屋に入るのに時間が掛かりましたが、一時間も掛けてはいません!」

 ケイトがたまらず叫ぶ。

「ならあの叫び声は、誰が出したって言うの?」