兎心の宝箱【短編集】


「ヒュッ!」

 息を吐き、無呼吸からの前進。

 他の古武術でも見られる瞬歩。

 一瞬で顔がつき合う程の距離まで詰めると下から上へと右肘を突き上げる。

 左の手の平は右の拳を包むように掴み、押し込む。

 技名は龍牙。

 本来は、膝を充分に落として、全身のバネを使って鳩尾か喉笛に叩き込む為、まともに食らえば命が危うい。

 流石にそんな危険な技は使えないので、膝はそこまで落としていない。