兎心の宝箱【短編集】

 問われたガッデム警部が忌々しげに答える。

「あぁ、三階のあの部屋の外には、木が一切植えられていない」

 それを聞いたロバートが更に問い掛ける。

「別に部屋からでるだけなんだからロープでも用意すればいいだろ」

「無いんですよ」

「そりゃ下からでもロープを回収できるように工夫したんだろ?」

 ノーベルが返した言葉にロバートが更に重ねる。

「いえいえ、足跡が無いんですよ」

「別にそんな事は……雨か!」

 やっと思い至ったのかロバートが手を叩く。事件があった夜は、雨が降っていた。ロープを渡す木が無い以上、下に降りるしかない。だがそこには、足跡が無い。