兎心の宝箱【短編集】

「では、今回の事件のあらましからおさらいしましょう」

 左右にゆっくりと歩きながら話しだす。

「さて、今回の事件、始まりは何だったでしょうか?」

 問われた冒険家のアーリーは、いきなりの問い掛けに少し驚きコーヒーをこぼす。

「おいおい、いきなり振るのかよ。さっさと犯人を言えよ」

 答えながらミリアから布巾を受け取ると、左手でコーヒーカップを持ち上げテーブルを拭く。

「すみませんね、ただ犯人を言っても皆さん納得して頂けないでしょう? それとちょっとしたお互いの記憶の確認ですよ」

「わかったよ、悲鳴だな。そうだ、グレーバー卿の悲鳴が聞こえて、何事かと思っていると、廊下からアンタがドアを叩く音が聞こえたんだ」

 アーリーの言葉にノーベルは頷く。

「そうまず悲鳴がありました。男性の声で。私の部屋の前は、グレーバー卿の部屋、左右はアーリーさんとアリスさんで間違い無かったですね」