兎心の宝箱【短編集】


「誰がこんな茶番をする許可を与えた?」

 ガッデム警部が、犬のような顔を赤くして憤る。

「事件の解決を早める為ですよ、警部。全ての糸が繋がったので皆さんに来て頂いたのですよ」

 ノーベルは、大仰しく頭を下げると集まった皆の顔を順に眺める。

「どういう事だ、この中に犯人がいるとは? 外部の犯行じゃ無かったのか?」

 社長のロバートが右手をテーブルに叩きつける。お茶を入れてきたミリアが、驚いてこぼしそうになる。

「私は、旦那様が誰に殺されたか知りたいです。ノーベルさん宜しくお願いします」 

 ミリアはノーベルの目を見つめて話した後、皆にお茶を入れて回る。

「私も聞きたいわ。本当なら今頃ここにいる皆さんとの絵を書いて、グレーバーさんに渡す予定だったんだから」

 ノーベルは、ガッデム警部に向き直ると再度頭を下げた。

「警部、宜しいですかな?」

 皆の視線を受けて、ガッデム警部はフテくされた表情で答えた。

「良いだろう、貴様の戯言を聞いてやる」

 ありがとう御座います。ノーベルはそう言って改めて皆を見回す。