兎心の宝箱【短編集】


 彼女の打撃は、その体格からは思いもつかない程重く鋭い。

 捌くだけでもかなりきつい。

 息もつかせぬ程の連激の中、俺は迷っていた。

 勝てる方法はある。

 だがその方法は使いたくないのだ。

 その迷いが隙を生む。

 連激のさなか、彼女が放ったハイキックをブロックしようとしたら、途中で変化し俺の左わき腹へと突き刺さる。

「ぐっ!」

 鈍痛が走る。

 牽制の蹴りを出しながら後退する。

 彼女も連激で息が続かなかったのか、追い討ちは掛けてこない。