兎心の宝箱【短編集】


 北条流柔術は、基本的に門下生をとらない。

 小さな頃から鍛え上げてきた自負はあるが、まともにやりあった事があるのは父親くらいだ。
  
 どうやっても間合いの取り方や攻撃のタイミングが、父親との練習にひきずられてしまう。

 道場に通い、大会に出ている彼女とはあまりにも場数が違い過ぎる。

「止まってても勝負はつかねえぞーー」

 神谷が無責任にこちらを煽る。

 簡単に言ってくれる。

 だがその言葉で彼女が動く。

「イヤーーっ!!」

 先程よりも更に早い攻撃が連続で放たれる。