兎心の宝箱【短編集】


「それに、もう着いたけどどうする? 僕は公衆の面前で口論をする気はないからね。家に入らないならここで失礼するよ」

 目の前にはかなり高級そうなマンションが立っている。
 催涙スプレーをグッと握る。

 教室も一緒にでたしここに来る途中同じクラスの人ともすれ違っている。

 私に何かあれば誰かが気付くだろう。

 優子は、そこまで考えると覚悟を決めた。

「いいわ! 中で話しましょう」

 後に付いて中に入る。

 部屋に着くまで二人とも話しはしなかった。

 扉を開けると廊下が真っ直ぐ伸びている。

 左に二つ、右と突き当たりに一つずつドアが見える。

 左のドアは、トイレとお風呂だろう。

 右は個室だろうか?

 前畑に続いて突き当たりのドアをくぐると、リビングが広がっていた。

 エアコンの風が顔に当たる。

 リビングの奥には和室が一部屋ある。

 前畑は、カーテンを開くとリビングに置いてあるソファーに腰掛けるように促す。

 ひどく暑い。