兎心の宝箱【短編集】


 放課後までの時間は、長く感じた。

 放課後、すぐに教室を出て行く美紀を見送ってから、前畑の机の前に立つ。
 
「場所を変えようか」

 彼はそういうとこちらも見ずに歩きだす。

 学校をでて、この間行った喫茶店とは違う方向に向かう。

「一体どこに向かう気?話ならこの間の喫茶店でいいじゃない?」

 彼は、優子を見ない。

「良かったらうちにご招待しようかと思ってね。あの喫茶店、うちの学校の生徒が意外と多かったからね。どこで話を聞かれるかわからない」

「聞かれたら困るような話でもあるわけ? 美紀のお母さんに聞いたわ、あの日美紀はデートだって言ってたって。あの娘がデートするのは貴方しかいないわ」

 家に向かってると聞いて、ノコノコとついて行くわけにはいかない。

 いきなり確信を突く言葉をなげかける。

 手探りでカバンの中の催涙スプレーを握っておく。

 普段護身用に持ち歩いている物だ。

「僕はフられたんだから、他の誰かじゃないのかい? それに君が怖い顔をしていたからね、そんな事をいいだすんじゃないかと思ったんだ。僕にだって生活がある。友達に勘違いされるのは嫌だからね」

 やはり優子を見ずに話をする。

 歩みは止めない。