兎心の宝箱【短編集】

 昼休み、優子は前畑の元に向かう。

 彼は、教室の片隅で一人弁当を食べている。

「前畑さん。ちょっと話があるんだけど」 

 そう言いながら、美紀の方に視線をやる。

「放課後にしないか? 人の目もあるし」

 優子は、すぐにでも問いただしたかったが気持ちを抑えた。

 言われて気づいたが、最近の美紀の状態に周りも違和感を感じているのだろう。
 クラスの何人かの視線を感じる。

「わかったわ」

 それだけ言うと渋々引き下がった。

 良かったよ、そう言って彼は微笑んだ。

 時が止まる気がした。

 その微笑みを見て、優子は確信した。

 彼が何か知っていると。

 恋人が……彼に言わせれば元恋人が……こんな状態にあって、浮かべる事のできる笑みではない。