兎心の宝箱【短編集】


 朝礼前、美紀に話かけた。

 あの日前畑さんに会わなかったか聞いたのだ。

 相変わらず美紀は、無機質な返答しかしない。

「前畑さんに会っていない。他の誰にも会っていない」

 でも美紀がおかしくなって今日で3日目、優子は違和感を覚えていた。

 あの日何かがあって美紀がおかしくなったのは確実だ。

 でも例えば感情を欠落するような何かがあったとしたら、こんなふうに普通に受け答えできるものだろうか?

 そう普通に受け答えしているのだ。

 試しに昨日の晩御飯を聞けば何を食べたか教えてくれる。

 ただ感情だけが全くないのだ。

 まるで美紀の姿を真似たロボットみたいに。