兎心の宝箱【短編集】


 後は、さようなら、それだけ言って別れた。

 あの角を曲がれば家に着く。

 何時もなら塀の上で昼寝をしている猫は、今日はいない。

 どこかでデートでもしているのかもしれない。

 頬を一粒の雫が伝う。

 いよいよ、雨が降ってきたのだろう。