兎心の宝箱【短編集】


 だから、と言うわけでは無かったが、今日駅前の喫茶店に呼びだされた時、予感はしていた。

 別れよう……。

 席に付いた私に彼は、一言そう言った。

 つまらない男。

 本当につまらない男。

 だから言ってやったのだ。

 最後に一度くらいホテルにでも行く? と。

 抱かせてやる、と。

 彼は、少し特徴的な眉をしかめて、首を横に振った。 

 君は最初から、そして今も僕の物じゃない、だからホテルには行けない。

 今時なんて馬鹿な男なのだろう?

 そんなふうだから駄目な男のままなのだ。