空では先程まで世界を牛耳っていた闇がその姿を潜め、美しい朝日が昇り始めていた。


そして新たな一日が始まりの音を告げる。


少しずつ朝焼けに色を変えていく世界。


世界が完全に出来上がる前に闇へと姿を隠さなくては。

それが馨が立花馨であるための絶対。


そんな思いとは裏腹に追い掛けてくる足音は減ることはなく。

朝は速度を落とさず刻一刻とその完成を迫っていた。




「ちっ」




その光景に小さく舌打ちを零す馨。




朝の光は、嫌いなんや。




きらきらと光る朝日を浴びて思い出すのは生臭い血の匂いと狂気に満ちた瞳。

そして投げ出された白い腕。


鮮明に甦る。


半年ほど前の、大切な家族を失ったあの日。