凍てつくような馨の瞳には情けの色など一瞬も窺えない。


まるで感情を全てどこかに置いてきたよう、そんな瞳に歳三はギリッと掌を握った。



あんな顔が、見たいわけじゃない。




歳三が見てきた馨は、もっと笑った顔が似合う普通の女の子で。

歳三の怪我を見て慌てて手当てしてくれるような、歳三の身を心配して自分の大切なものを預けてくれるような優しい女の子なのだ。


苦しむ顔など似合わない。


そんな歳三の思いとは裏腹に、馨は無表情のまま更に深く男の首へ刀を突き付ける。




それを確認した先は本当に無意識の行動だった。


何を考える暇もなく動きだした歳三の体。


そして




「かお、やめろ!!」




ただ一つ暗闇に響く声。