実際にお目にかかることなど有り得ないが、生き血を吸うとさえ噂されるそれはまさに伝説級の代物で。




…ど、して…そんな名前が出るんだ…っ




「その顔は知っているようだね」




村正の名前に驚き声が出せない歳三は何とかその首を縦に振り是と返す。


ふと下を見れば知らぬうちに小刻みに震えていた己の手。

それを隠すように強く拳を握りなおし、再び庄左衛門と顔を向き合わせた。


庄左衛門は一呼吸置いた後、歳三の目を真っすぐに見つめ紡ぐ。



馨が探しているそれの正体を。




「彼女が探しているのは、村正と縁のある日本刀だ」