欲求さえ晴らせりゃ何でもいいと思ってたんだ。


でも、かおは違う。


かおだけは…俺の中に小さな恋心を落としてくれて…



だから、だから…



ぐっと歳三の指が馨の白い肌にめり込む。その痛みに馨は一瞬顔を顰めたが言葉を発することはなかった。

何も言いたくないとばかりに口を真一文字に結んでいる。




「…っ何とか言えよ!!」




悲鳴のようにも聞こえる歳三の叫びが暗さを増した静かな空気に広がって。




「…には…………ん」




その中に紡がれた細く小さな声。

逃さぬよう顔を上げた歳三の目の前にいた馨は下を向き表情を隠していた。


それが歳三の中に嫌な予感を産み落とす。



決まっているのだ。こういう嫌な予感ほど…外れない、と。




「歳さんには…関係ありません」