季節はぎりぎりの春、六月のことだった。その日は確か雨で、全国的に言えば梅雨の真っただ中だったが、梅雨の存在しない北海道には関係ない。だが、「あの日」は確かに雨だった。

 何から思い出していけばいいのかわからないけど、その日は雨で、クラスメイトの男の子が二階に窓から突き落とされた。

 それを第一に発見したのが、私だった。

 そう、たまたま私だっただけ――


 ☆☆☆


 あの日の私には、それこそ連日に渡って降り続けていた雨のように、今まで積み重なってきた「重み」が酷く重く降り積もっていた。だから、あんな行動をしてしまったのかもしれない――なんて思う。

 これは、私が人生の中で一番の『春』を味わった、青春の経験談だ。

 心を楽にして、ゆっくり、暇な時にでも聞いてほしい。


 なにはともあれ、唯野 花菜。十七歳の春である。