そこに、電車が滑り込む音が響く。
先に改札を抜けた太田を待たせているのをすっかり忘れていた。
「そろそろ行きますね」
「ああ。いろいろと、本当にありがとう」
「いえ。それじゃあ、また」
挨拶して、大急ぎで改札を駆け抜ける。
“僕はまだ若いけれど、
人を必要としたり、
必要とされたりすることが
これほど幸せだと
思えたことは、
生きてきた中で
初めてだったんだ。
誰かを必要としたり
されたりすることって、
よくある。
できないことを
手伝ってもらったり
手伝ってあげたり、
何かを頼んだり
頼まれたりだとか”



