如月さんがオムライスを口に入れるまでがやけにスローに見えた。
「………ん。おいしい」
飲み込んだ後、いつもより優しい笑みを浮かべた彼が私を見つめた。
「…良かったぁ……」
ほっと胸を撫で下ろす。
安心すれば、急にグーとお腹がなる。
「恋歌ちゃんも食べなよ」
クスクス笑ながら勧められて、少し恥ずかしくなりながらも頷く。
「いただきます…」
私が食べる様子を、今度は如月さんが見守る。
「…おいしい」
中のご飯は味見したけど、卵までは出来なかったから実は不安の要素は卵だった。
でも、いい感じのふわふわ具合で、ほんと良かった。
美味しそうに食べてくれる如月さんを見てると、不安が吹き飛ばされた気がした。
「それにしても、どうしてオムライスなんですか?」
二人でオムライスを頬張りながらふと疑問をぶつけた。
「……昔、母さんが作ってくれたんだ」
手を止めて、どこか遠い目をした彼の横顔は少し寂しそうだった。

