それから数分はその状態が続いたけど、不意に耳元に気配を感じた。
「ありがとう」
「へ!?」
囁くような低い声に、思わず変な声が出てしまう。
「俺を選んでくれて。……ありがとう」
改めて言われてしまえば、どこか恥ずかしさが襲う。
「い、いえ…。今日は如月さんへのお礼だし……」
「お礼、ねぇ。それじゃ無理に付き合わせてるみたいじゃん」
「えっ、そんなつもりじゃ…」
拗ねたような声がして、慌ててフォローしようと顔をあげて固まる。
少しでも口を開けば息がかかりそうな距離。
少しでも動けば唇が触れてしまいそうな距離。
「っ……」
「……」
じっと見つめ合えば、一気に顔が赤くなるのが分かる。
「ほんと好き」
聞こえるか聞こえないかのボリュームで呟いて、チュっと触れるだけのキスが来る。
一瞬離れて、すぐにまた降ってきた唇は、徐々に深さを増して。
あぁ、これで全員だ…、なんて頭の中で考えた。

