この人は声のテンションと言ってることが一致しない。
「む、迎えに来るって…」
「どこにいるの?ねぇ」
こちらの話なんか聞きもせず、ただ質問を重ねてくる。
私があたふたしていると、急にケータイが後ろに引っ張られるように無くなった。
驚いて振り向くと、悪戯な笑みを浮かべた如月さんと目が合った。
「もしもし。秀弥だけど」
勝手に私のケータイで薪坂さんと会話し始めてしまって如月さん。
ポカンとしたまま見つめてみるけど、向こうの声は聞こえないから、どんな会話をしているのか全く分からない。
「…うん、いるよ。……さぁ?どこだろうね」
今までになく黒い顔をした彼は、じっと私を見つめたまま会話をする。
「いいけど、お前が着くころにはいないと思うよ。……バカか。俺んだ」
得意気に言ったあと、ピッとボタンを押して通話を切った。
はい、とケータイを私に返して、ベンチとは逆方向へ向かう。
「ちょ、ちょっと如月さん!!」
慌てて私も後を追えば、笑いながら振り向いたけど止まってくれる様子はない。
やっと隣にたどり着いて、歩幅を合わせながら歩いてみると、さっきと大して変わらないことに気づく。
やっぱり、歩くの早いんだなぁ…。
のんびりそんなことを考えていれば、いつのまにかロールス・ロイスが目の前に横たわっていた。

