藤野さんが降りてきて、ドアを開けてくれる。
お辞儀をして、ロイスに乗り込むと、後から如月さんも乗ってくる。
「藤野、よろしく」
「かしこまりました」
ドアが閉じる直前に彼が声をかけると、藤野さんは言ってドアを閉めてからお辞儀をした。
「どこ行くんですか?」
「内緒」
顔だけを横に向けて尋ねれば、彼は悪戯っぽく笑った。
ちょっと肩をすくめて、成り行きに任せる事にした。
「ところで恋歌ちゃん。誰にするか決めたの?」
唐突すぎる質問に、思わず首を傾げると、ちょっと笑ってこっちに体を寄せてきた。
「俺と、心次と、洸季。誰と一緒になるか、決めた?」
意地悪く、耳元で少しゆっくり目に囁かれた言葉は、今考えなければならないことを思い出させてくれた。
「……いえ…まだ…」
小さな声で返せば、彼はさらにこちらに寄る。
「俺にしとけば?俺なら、生活には困らないし、恋歌ちゃんを怖がらせたりしないよ」
春瀬との出来事を知っている彼だからこそ、そういう気持ちになるんだろう。
どう返事すればいいのか分からなくて黙ってしまう。
「まぁ、ゆっくり考えてよ」
笑みを含んだ優しい言い方をして、そっと私の耳にキスを落として離れて行った。

