如月さんたち3人も、私の異様な雰囲気を感じ取ったのか、表情を険しくして、私の前に立ちはだかった。


「誰だよ、お前」


卿渓さんが凄んでも、奴は…春瀬は、まったく動じなかった。


「そいつの元彼です」


ちょいっと私を指さして、得意気に笑った。


「元彼!?」


薪坂さんが驚いたように声を上げた。


「なんで元彼見て、こんな震えんだ。お前、恋歌ちゃんに何したんだよ」


さっきとは打って変わって厳しい雰囲気を身に纏った薪坂さんは、今にも春瀬に掴みかかりそうだった。


「何って……俺は別に何もした覚えはねぇんだけどな。


恋人同士なら当たり前にすることをしようとして、こいつが嫌がっただけだ」


頭のいい如月さんは、その言葉だけで、何があったのか察した様子だった。


「おい、恋歌。そんな怯えることねぇんじゃねーの?」


するりと彼らの壁をすり抜けて、私の肩に手を回す。


ビクッと反応した体は、さらに震えを増す。


「おいおい、ずいぶん嫌われたもんだな。あ?」


顔を覗き込まれて、合った目は、寂しさと切なさと脅すような光を湛えていた。


「やっ……、触んないで…」


必死に抵抗してみても、体は固まってしまって動かない。


自分ではひねったつもりなのに、ほとんど動作をしていなかった。