「早苗ー!!帰ろうぜ」
放課後。
茫然と席に座る私のところに、心次がいつものようにやってきた。
「……」
「おい、早苗?」
どうしても、心次と口を効く気にはなれなかったけど、心配はかけたくないから笑顔で頷いた。
でも、頭の中を巡るのは、さっき聞いた話ばかり。
心次の声も、右から左へと流れていく。
「……」
「……おい、早苗。どうかしたのかよ」
さすがにおかしいと気付いたのか、心次が不機嫌そうに聞いた。
「…どうもしないよ」
いつもよりワントーンもツートーンも低めの声で答えると、心次はイライラしたようにため息をついた。
「なんなんだよさっきから。俺の話も上の空で聞いてるくせに、どうもしねぇって?
そういうめんどくせーの嫌いだから、なんかあんならはっきり言え」
口調は乱暴だけど、ちゃんと私を心配してくれているんだということは伝わった。
だからこそ、言いにくくて仕方ないのに…。

