「え、まじ…?」
驚いたと言わんばかりの顔で、心次が限界まで私に詰め寄る。
「ちょ、近い…」
身を引こうとしても、心次に腕を掴まれてしまい、逃げようがなくなる。
「まじで言ってんの?」
怖いくらい真剣な顔で聞かれて、このまま逃げるなんてことは許されないと悟る。
「まじ……だよ」
ちゃんと目を見れないまま返事を返す。
「うそだろ…」
信じられないと目が訴える。
「あ……や、そうだよね。今日初めてまともに話したくらいなのに、おかしいよね…」
慌てて弁解しようとしても、気持ちとは裏腹な言葉しか出てこなくて、上手く言葉を繋げない。
「ご、ごめんっ。忘れて、今の!!」
無理やりな笑顔を作って、極力明るい声で言ってみても、心次の表情は変わらない。
掴まれた腕に、より力が入った気がした。
心次が今何を考えているのかは分からないし、感情の読み取れない顔で見つめられたら、どうしていいか分からなくなる。

