「そういう生活と、そういう自分が当たり前になってたから、男の人の優しさとかって全部表面だけだと思ってた。


それだけに……城西さんの気持ちも、優しさも、信じていいのかわかんなくて」


今にも泣き出してしまいそうな潤んだ目で、どこか遠くを見つめている。


「もちろん、優貴恵の元彼だし、悪い人じゃないのは分かってるんだけどね……」


幸せって、こういうことなんだと思う。


嬉しくて、幸福感で満たされて、だけど…同時に不安と不信感が背中合わせであるんだ。


「でも、信じるしかないんじゃない?私も会ったからわかるけど、城西さんはちゃんと早苗を想ってくれてるよ」


今の私には、そう言うしかないもん。


「……そうだよね。わざわざ恋歌のとこに行ってるくらいだもん。信じるしかないね」


そこをわかってて、早苗は満面の笑みでアドバイスを聞きうけてくれた。


なんとなく二人で微笑みあっていると、早苗のケータイの着信音が鳴った。


「ちょっとゴメン」


ケータイを手にして、店の奥まったところで電話に出てる早苗を見つめて、葛餅を口に運ぶ。


早苗の表情を見てると、笑ったり驚いたりころころ変わって、全然飽きない。


通話を終えた早苗が、心なしかうきうきした雰囲気で戻ってきた。