「今日は、ありがとうございました」


「ね、早苗ちゃん。もう付き合ってるんだから、敬語やめよう?」


あの後、まっすぐ家に送り届けてもらったので挨拶をしたら、城西さんからそんな提案があった。


「え…?」


「俺の事も、真咲って呼んで?」


微笑みと共にそんなことを言われたら、黙って肯くしかない。


「じゃ、おやすみ。早苗」


「あ……おやすみなさい」


急に呼び捨てになったことにドキッとしながらも、つい敬語っぽくなってしまう。


そんな私をおかしそうに笑って、手を振りながら城西さんは帰って行った。


「……真咲…」


ちょっと呟いただけでも、なんだか恥ずかしくて居たたまれない気持ちになる。


あんなにカッコいい彼氏がいていいのだろうかと不安になる。


だけど、今は目の前の幸せをちゃんと受け入れようと、ルンルンな足取りで部屋へと帰った。


その日の夜は、なんだか気分が高揚してなかなか寝付けなかった。


頭の中は真咲の事でいっぱいだし、あの高台での出来事も、何回思い出したことか。


恋歌に話したいことだらけで、ウキウキとしながら一日を終えた。