こんなにドキッとしたのはいつぶりだろう。


数々の合コンをセッティングして、こなしてきた私だけど、これといった男性と巡り合うこともなかった。


だいたいみんな、いいお友達で終わってしまう。


私が鈍いだけかとも思ったけど、そうじゃなくて。


心次と付き合っていた時もそうだけど、結局私は恋愛対象にはならないんだって思い知らされていたから。


そういう理由もあって、城西さんが私を好きって聞いた時も、躊躇ったんだ。


だけど、こんなに城西さんは私をドキッとさせる。


彼は、私の額に軽く唇をつけると、すっと手を差し出した。


「行こう、早苗ちゃん」


その手を恐る恐るといった感じで掴もうとすると、待ちきれなくなったのか、城西さんがギュッと私の手を握った。


思わずビクッと手を引きそうになったけど、城西さんの優しい笑顔と出会って、心が落ち着いたような気がした。


そのまま、どこか行くのかと思ったのに、城西さんはくるっと回れ右をして、立金花へと入って行った。


「え…。え、城西さん?」


私の質問にも笑顔で返して、彼は何も言わず店内を迷うことなく進んだ。