この間はドルチェに行ったから、今回は和風の甘味屋さんに行くことにした。


「あそこの葛餅、久しぶりに食べたいな」


なんて他愛もない会話をしながら大学を堂々と抜けて、お店を目指す。


ちょっと歩くと、和風な文字で″蔵ノ屋″と書かれたのぼりが見えてくる。


さすがに午前中のこの時間、人の姿はほとんど見られない。


「いらっしゃいませ」


和服姿のきれいな女将さんと、美形の旦那さんが迎えてくれる。


ここは、明治から続く老舗だそうで、この旦那さんで4代目。


夫婦仲良く経営してるお店だ。


店内の雰囲気も良く、ショーケースに並んだ和菓子はどれもおいしそう。


お店の奥には食事ができるようにテーブルがいくつか並んでいて、その一つに腰を下ろした。


「葛餅と、あんみつ下さい」


注文を済ませ、商品が来るまで雑談をする。


「お待たせしました」


愛想のいい旦那さんが葛餅とあんみつをテーブルに置くと、お辞儀して戻っていく。


それを見届けて、早苗が話を始めた。


「昨日の3時。駅前の立金花に城西さんと待ち合わせたの___」