「うそ。冗談に決まってるじゃん」
……え、どっちが?
キスしたこと?さっきの言葉?
薪坂さんの言葉を聞いてもなお、戸惑ったままの私を彼は本当におかしそうに笑った。
「キスしたことじゃなくて、ね?
恋歌ちゃんって、ほんとかわいいね。清純って感じで」
なんか…イメージ壊れるんですけど。
さっきから黒い笑みを湛えたままの薪坂さんは、いつもと違う人。
顔が赤くなってるのが自分でもわかるけど、こればっかりはもうどうしようもない。
いい加減、免疫できればいいのに…。
切実な願いの下、顔をうつむかせてる私の手をそっと握って、薪坂さんはまた歩き出す。
しばらく歩いて、バス停へとついた。
「このバスで、帰れるよね?」
「え…あ、はい。大丈夫です」
バスの時間表を見てみると、20分ほど待つことが分かった。
しばらく手を繋いだまま黙っていたけど、やっぱり唐突に薪坂さんが口を開いた。

