不思議な人。
だけど、どこか安らぎを与える雰囲気があって、人の気持ちをちゃんとわかってる。
自分だって他から見れば不幸せな家庭環境なのに、そんなの微塵も感じさせない。
……すごい人だな。
薪坂さんの横顔を見つめて、そんなことを考えていると、ふと薪坂さんが振り向いた。
ばっちり目線があって、ちょっと驚いたような顔をした彼は、それでもすぐに笑顔を作った。
「…俺の顔、なんかついてる?」
少し意地悪い笑みに、私は戸惑いを隠せない。
「あ…いえ、あの……」
不意打ちをくらった私はしどろもどろで返事をしてしまった。
「それともなに?……俺に見とれてた?」
一瞬、薪坂さんらしくない黒く妖しい笑みがのぞいて、ドキっとする。
「そ、そんなんじゃ…」
目は泳ぎっぱなしで、呼吸もうまくできない私を見て、彼はクスっと笑う。
「え……」
優しく口付けをして、優しく笑った。

