声を抑えて泣き出した私を、彼は戸惑いながら見ていた。
「ちょ…、ちょっと、恋歌ちゃ……」
不覚にも、そんな薪坂さんにキュンとしてしまったけど。
「……ごめんなさい。もう、大丈夫です」
小さく微笑みを見せると、薪坂さんも安心したように微笑んだ。
初めて会った時から、印象は変わらなくて。
とっても優しくて、穏やかで、器の大きい人で、なにより……
一緒にいて、すごく落ち着く。
なんだか不思議な雰囲気を持った人。
「そろそろ出ようか」
私が落ち着きを取り戻したのを確認してから、薪坂さんがゆっくり口を開いた。
会計を済ませて、喫茶店を出ると、ゆっくりと歩き出す。
「どうやって来たの?」
やっぱり唐突な薪坂さんの問いに一瞬戸惑うけど、それでもちゃんと答えを返す。
「あ…バス、で」
「そっか。バスで来たんだ」
ふーんと肯いて、薪坂さんは前を向いた。

