HRが終わり、みんなそれぞれ下校の準備に入る。
「早苗、このまま行くの?」
「うん、そうする。恋歌は?」
「私はこのまま薪坂さんの病院行ってくるよ」
「あ、そっか。薪坂さん退院だもんね。じゃ、また明日」
早苗は一刻も早く城西さんとの待ち合わせ場所に行きたいのか、駆け出すように走り去って行った。
グーっと伸びをして、フッと息をつくと私も薪坂さんの病院へ向かって歩き出す。
バスを待っていると、学校方面から見慣れた顔が現れた。
「……バス、待ってんの?」
話しかけてきたのは、さきほど私の靴をずたずたにした小柳さん。
別に敵意を持つわけじゃないし、同情もしないけど、やっぱり会いたいとは思わない。
「そうだけど。…小柳さんは?」
顔も見ずにちょっと素っ気なく答える。
彼女は私の隣に立って、しばらくためらっている様子だった。
「……怒ってる?」
「…何に?」
もちろん、小柳さんの問いの意味は分かってるけど、素直に怒ってるとは言わない。
…というか、怒ってもないんだけどね。

