「キャっ」
思わず女の子っぽい声を出したのは、自分の靴がずたずたにされていたから。
「……なに…これ…」
早苗が私の悲鳴に驚いて寄ってきて、私の靴を見て目を見開いた。
この靴を見て、私自身はそこまで驚かなかった。
きっと、犯人が分かっていたから。
この靴を見た瞬間、頭の中には一人の女の顔が浮かんでいた。
「小柳さん……」
「え、優貴恵?」
ボソッと呟いた私の言葉に、驚きを隠せない様子の早苗。
あの肩をぶつけてきたことといい、そのあとの去り際の顔といい、昨日の電車での言動といい、秦野くんの発言といい……。
この靴で、全部の出来事が一直線につながった。
私は、とてつもなく小柳さんに恨まれてるんだ。
「なんで、優貴恵がこんなこと!?
……そりゃ、さっきの肩のことはあるし、昨日の電車のこともあるけど、だからって優貴恵がこんなこと…。
なにも理由がないじゃない…」
早苗は驚きと悲しみが混ざったような複雑な顔をしていた。
「……そう…なんだよね」
小柳さんに恨まれてるってことはきっと事実だろうけど、理由がない。
私は小柳さんに恨まれるようなことは、一つもしてないよ。

