いったん教室に戻って、次の講義のための教科書を取る。
「だから。内田だから、サボろって」
早苗がいたずらっ子のような笑みを見せて、そういう。
さっき私に問いかけてたのは、このことだったのか。
思い当たると、私も同じくいたずらっ子の顔になって、大きく肯いた。
「よし、決まり。どこ行こうか」
話しながら下駄箱に向かって歩き出す。
「ん~、どこでもいいけどなぁ。なんか甘いもんでも食べに行く?」
この辺りは大学生向けのお店が多くあって、甘味系のお店が2、3軒並んでいる。
あんみつや葛餅などの和風の甘味屋。
パフェやケーキなどの洋風の甘味屋。
パン屋さんが甘味屋さんも兼ねて出してるおかしなど。
女子大生に大人気のお店のため、放課後に寄っても満員で入れないこともしばしば。
そのため、私たちみたいに講義をサボってまで食べに行く人もいるのだ。
「じゃ、今日はドルチェ行こうか」
イタリア語で″甘味″や″甘いもの″という意味のお店は、上記から行くと2つめ。
洋風の甘味が置いてあるお店だ。
「いいね。あそこのモンブラン、めっちゃおいしいんだよなぁ」
「私は普通のショートケーキのが好きだけどなぁ」
他愛もない話をしながら玄関に到着して、自分の靴を確認したそのとき______。

